北欧家具とヴィンテージラグが調和する、余白ある家族の風景|Rugs and Life. vol.2|G.E.M

【ラグと、暮らすこと。】vol.2

北欧家具と1点もののラグが織りなす、
余白ある家族の風景。

お話を伺った人:安井 拓さん(Favorオーナー)

今から15年ほど前、名古屋市名東区に移転オープンした「Favor」。
店舗の改装は、いつかお願いしたいと憧れていた、建築家・杉下均さんに依頼。その後、念願だった自邸の設計も依頼しました。

今から約8年前に完成した住まいには、安井さんが長い時間をかけて集めてきた家具や雑貨、ラグが並びます。 北欧ヴィンテージ家具や雑貨に囲まれながら育まれてきた、家族の日々の景色とは、どのようなものなのでしょうか。

「北欧の家」ではなく、
丁寧に暮らすことを目指した家

「家づくりは北欧を参考にしたわけではないのです」

北欧ヴィンテージ家具店を営む安井さんから、まず出たのはそんな意外な言葉でした。

外観イメージ1

憧れの建築士を前に、すべてを委ねたという安井さん。願ったのは、家族で過ごす丁寧な暮らしと、広々とした空間。そして、自分たちで買い付けた北欧家具をしつらえる家であること。

室内全体イメージ2

そこから生まれたのは、「北欧の家」ではなく、家族が心地よく暮らすための家でした。杉下さんの建築に惹かれた理由を尋ねると、安井さんは「教会のような静けさがあるんです」と話します。

季節によって家族で過ごす場所が変わる家

安井さんの自宅には、一般的な玄関という概念がありません。上がり框はなく、靴は扉のそばに設けられた棚へ。

玄関イメージ

一歩足を踏み入れると、薪ストーブにウェグナーのデイベッド、小さなデスクやランプが置かれた、まるで別荘のような空間が広がります。夏は涼しく、冬は薪ストーブのぬくもりに包まれる1階。この家では、家族で過ごす場所も季節によって変わるそうです。

1階部屋イメージ

冬は薪ストーブを囲みながら1階で食事をし、その傍らで子どもたちが宿題をしたり、本を読んだり。春から初夏にかけては、心地よい風が通り抜ける2階が家族の居場所になります。

1階デスクイメージ

取材で訪れた6月初旬も、窓を開けると風が家の中をやさしく通り抜けていきました。この時期は、2階で過ごす時間が自然と長くなるのだそうです。

友人と囲む、大きなテーブルと、
家族で過ごす、丸いテーブル

2階に入ってすぐに目に飛び込むのは、3mもの大きなダイニングテーブル。そしてキッチンの前には、1.2mほどの伸長式の丸いダイニングテーブルが置かれています。

大きなテーブルイメージ

大きなテーブルには友人を招いて夕食を。丸いテーブルでは、家族でゆっくりと朝食を。この家で暮らし始めてから、「ゆとりを感じられるようになった」と話す安井さん。

丸いテーブルイメージ

自らの友人はもちろん、子どもたちも友だちを家に招くようになり、一緒に食事をしたり、夜遅くまで語り合ったり。空間を壁や仕切りで区切るのではなく、家具や過ごし方によって緩やかに場を分ける。そんな設えが、人が自然と集まり、それぞれが心地よく過ごせる居場所を生み出しているようでした。

光と影
余白のある家

これまでにもリノベーションを経験してきた安井さん。「生涯の家」を建てるにあたり、大切にしたのは、「余白があること」でした。余白とは、見た目のゆとりだけではなく、心や暮らしにも余裕を持てること。

2階の窓イメージ

安井さんの住まいを見渡すと、真っ白な壁に高い天井、木枠の美しい窓、形成された光と影。どこか海外の田舎町に佇む小さな教会のような、新しいのに懐かしさを感じる空間。時間とともに移ろう光と影が、その静かな空気をより豊かなものにしていました。

2階の窓イメージ

北欧家具とトライバルラグ
年を重ねて感じる、一点ものの価値

自ら北欧の国々で買い付けをする安井さんにとって、ヴィンテージのトライバルラグはとても馴染みが深いものだったそう。「北欧では多くの家でトライバルラグが使われていて。だから、いつか自分の家にも取り入れるものだと思っていました」

北欧では家具を代々受け継ぐことが多いが、実は、ラグも受け継がれるもの。安井さんが初めて購入したトライバルラグは、デンマークで出会ったヴィンテージでした。

トライバルラグと薪ストーブ

当時、ラグの知識が少なかった安井さんにとって、そのラグは手織りか機械織りかも判断がつかなかったそう。とにかく格好良く、北欧の家でもよく使われている一枚を選んだ。

購入後しばらくは、別のラグを使うなど、トライバルラグの存在を忘れていたという安井さん。ところが、数年前からトライバルラグをデイベッドに合わせるようになった。「年を重ねてきたからですかね、一点ものの良さを実感するようになりました」。

この世界にひとつしかないものを暮らしに迎える。その価値を、以前よりも強く感じるようになったといいます。

・ヴィンテージトライバルラグ

デンマークで出会ったヴィンテージトライバルラグ。のちに価値ある手織りのラグと知り、よりいっそう愛着が深まった大切な一枚です。

Tribal Rug(トライバルラグ)コレクションを見る

憧れから、暮らしの定番へ

フィンランドの建築家・アアルトの自邸で使われていることで知られる、ベニワレンラグ。数年前、Favorでラグイベントを開催した際に迎えた大きなベニワレンは、今では家族の暮らしに欠かせない存在になっているといいます。

ベニワレンと安井さん

「思わず寝転がっちゃうんですよね」

食後のひとときや、雑誌を読む時間。ソファではなく、自然とラグの上に身を委ねてしまうのだそうです。家族が集まり、くつろぎ、それぞれの時間を過ごす場所。ベニワレンは、ただ床に敷かれた一枚のラグではなく、暮らしの景色の一部になっていました。

・ベニワレンラグ

購入して本当に良かったという、ベニワレン。ふわふわとした質感に思わず寝転んだり、自然と家族が集まるリビングの中心になっています。

Beni Ouarain(ベニワレン)コレクションを見る

好きなものに囲まれて、暮らしを育てる

安井さんの自宅には、北欧家具やオブジェ、ラグなど、長い時間をかけて集めてきたものたちが自然に並びます。「仕事と暮らしは、自然とつながっている感覚なんです」

パーソナルチェアとオブジェ

そう話す安井さんにとって、店に並ぶ家具や雑貨は、自分自身も使いたいと思えるものばかり。大きく模様替えをすることはなくても、パーソナルチェアの向きを変えたり、オブジェを入れ替えたり。

籐を巻いた柱のディテール

そんな小さな変化を重ねながら、自分たちらしい景色を育てているのだそうです。仕事と暮らしを分けるのではなく、好きなものに囲まれながら日々を重ねていく。その自然体な姿勢が、この住まいの心地よさにつながっているように感じました。

安井拓
お話を伺った人:安井 拓(Favorオーナー)

北欧ヴィンテージ家具店「Favor」オーナー。 20代でアメリカのフリーマーケットに行った経験をきっかけに、ヴィンテージ家具や雑貨の魅力に惹かれる。以来、自ら北欧各国を巡り、家具を買い付ける。 現在は、家族4人で暮らしながら、北欧家具や雑貨のある日々を楽しんでいる。

店長 大塚
編集後記:店長 大塚

仕事でも、暮らしでも、安井さんはいつでも自然体。ご自宅に伺い、その理由が少しわかった気がしました。8年が経った住まいは、自ら外壁を塗り直したり、柱の籐を張り替えたりと、少しずつ手がかかることも増えてきたそうです。それでも、「その分、愛着が湧くんです」と笑う安井さんの姿が印象的でした。自宅でも使いたいと思えるものだけを買い付ける。その姿勢は、仕事と暮らしが自然につながる安井さんらしさそのものなのかもしれません。