キムホノさんのアトリエ「キノハウス」を訪ねて|Rugs and Life. vol.1|G.E.M
すべての空間が床の間になる。
キノハウスに流れる豊かな時間。
お話を伺った人:キムホノさん
戦時中に多治見から移築されたというこの家は、100年ほどの歴史を持つ。
お話を伺った6月は紫陽花が咲き、木々の緑と小さな虫たちが出迎えてくれました。この自然に囲まれた場所で、キムホノさんはどのような暮らしをしているのか。そして、自由でユーモアあふれる作品を生み出すキムホノさんとはどのような人物なのか。その暮らしの気配に触れていきます。
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何かをはじめるきっかけに
気づきをもたらす場所でありたいキムホノさんが自宅兼アトリエとして暮らす、通称「キノハウス」。ここから何かに気づき、人の気持ちや物事が少しずつ動き出していってほしい。そんな想いが、このアトリエの名前には込められています。
大きな台所とカウンターテーブル、居間のような広々とした空間。奥には、棚いっぱいに本が収納された書斎。ゆるやかな時間が流れるアトリエには、人が自然と集まり、それぞれの時間を過ごします。
春から夏にかけては、庭に咲くどくだみを摘んでお茶やかゆみ止めに。季節が巡れば、山椒の実やふきのとうも顔を出します。時間や環境に抗うのではなく、その時々に訪れる自然の恵みを受け取ること。そんな暮らしの風景からも、キムさんのしなやかな生き方が伝わってきます。 -
台所から眺める、最高の景色
大きな台所では、キムさん自ら料理を振る舞うことも。なかでも珈琲はキムさんの担当。本格的なドリップで淹れられた一杯は、訪れた人たちを唸らせます。
「特にここからの景色が最高でね」
そう言って腰を下ろしたのは、台所側のカウンター席。そこからは庭の緑はもちろん、自身の大きな作品やラグ、家具まで、空間全体を見渡すことができます。「大切な友人の顔を見ながら、この部屋全体を眺められるんです」
目の前には人がいて、その向こうには自らが選び、つくり上げてきた暮らしの風景が広がる。キムさんにとってこの席は、部屋のすべてを感じられる特等席なのかもしれません。 -
特別な場所は、自分でつくれる
「お気に入りを置くことで、すべての空間が床の間になる」
そう話すキムさん。床の間とは本来、掛け軸などを飾り、季節や美意識を映し出すための場所。けれど、自分にとって大切なものを置くことで、その場所は特別な景色になる。キノハウスの随所に置かれた作品や道具たちは、キムさんにとっての「床の間」になっているのです。 -
暮らしの景色をつくるもの
お気に入りのものを置くことで、その場所は特別な景色になる。キムさんが話す「床の間」の考え方は、キノハウスに敷かれたラグにも通じています。
人が集う居間、静かに過ごす書斎、風を感じるウッドデッキ。その場所でどのように過ごしたいのか。キノハウスのラグたちは、それぞれの空間に流れる時間に寄り添うように選ばれていました。そこには、その場所でどんな時間を過ごしたいのかという、お二人の思いが映し出されているようでした。
・ギャッベ(居間)20年以上前に購入したギャッベ。あたたかみのあるデザインながら、細長いサイズ感はラグを格好良く見せてくれる。
・フェルトラグ(書斎)染織家・冨田潤さん作の二重織フェルトラグ。BCソファの和テイストとモダンなラグが書斎によく合っています。
・モロッコラグ(書斎隣)モノクロのウールラグ。ずっしりとしたアフリカのテーブル(現地では洗濯板)との相性がよく、他の空間との調和も取れています。
・ギャッベ(ウッドデッキ)キムさんが春実さんにプレゼントした、思い出の一枚。
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いつかはバトンタッチができたらいい
いつか自分たちがいなくなり、この場所がただの空き家になってしまうのは少し寂しい。だからといって、今の形にこだわるわけでもない。
「ここを気に入ってくれる人がいたら、形を変えたっていいんです」
そう話すキムさん。誰かがこの場所を引き継ぎ、新しい時間を重ねていく。そんな未来があれば嬉しいという。けれど、無理に探そうとはしない。きっと、その時が来れば自然とそうなっていくものだから。 -
キノハウスで過ごした時間は、自分にとって心地よい景色とは何かを、改めて考えさせてくれるものでした。その景色は、特別なものではなくていい。お気に入りの器を置くことかもしれないし、一枚のラグを敷くことかもしれない。
ラグを選ぶことは、部屋を飾るためだけではなく、自分の心が動く景色をつくること。キノハウスに流れる時間は、そんなことを教えてくれるようでした。
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