北欧家具とヴィンテージラグが調和する、余白ある家族の風景|Rugs and Life. vol.2|G.E.M
【ラグと、暮らすこと。】vol.2
北欧家具と1点もののラグが織りなす、
余白ある家族の風景。
お話を伺った人:安井 拓さん(Favorオーナー)
店舗の改装は、いつかお願いしたいと憧れていた、建築家・杉下均さんに依頼。その後、念願だった自邸の設計も依頼しました。
今から約8年前に完成した住まいには、安井さんが長い時間をかけて集めてきた家具や雑貨、ラグが並びます。 北欧ヴィンテージ家具や雑貨に囲まれながら育まれてきた、家族の日々の景色とは、どのようなものなのでしょうか。
「北欧の家」ではなく、
丁寧に暮らすことを目指した家
「家づくりは北欧を参考にしたわけではないのです」
北欧ヴィンテージ家具店を営む安井さんから、まず出たのはそんな意外な言葉でした。
憧れの建築士を前に、すべてを委ねたという安井さん。願ったのは、家族で過ごす丁寧な暮らしと、広々とした空間。そして、自分たちで買い付けた北欧家具をしつらえる家であること。
そこから生まれたのは、「北欧の家」ではなく、家族が心地よく暮らすための家でした。杉下さんの建築に惹かれた理由を尋ねると、安井さんは「教会のような静けさがあるんです」と話します。
季節によって家族で過ごす場所が変わる家
安井さんの自宅には、一般的な玄関という概念がありません。上がり框はなく、靴は扉のそばに設けられた棚へ。
一歩足を踏み入れると、薪ストーブにウェグナーのデイベッド、小さなデスクやランプが置かれた、まるで別荘のような空間が広がります。夏は涼しく、冬は薪ストーブのぬくもりに包まれる1階。この家では、家族で過ごす場所も季節によって変わるそうです。
冬は薪ストーブを囲みながら1階で食事をし、その傍らで子どもたちが宿題をしたり、本を読んだり。春から初夏にかけては、心地よい風が通り抜ける2階が家族の居場所になります。
取材で訪れた6月初旬も、窓を開けると風が家の中をやさしく通り抜けていきました。この時期は、2階で過ごす時間が自然と長くなるのだそうです。
友人と囲む、大きなテーブルと、
家族で過ごす、丸いテーブル
2階に入ってすぐに目に飛び込むのは、3mもの大きなダイニングテーブル。そしてキッチンの前には、1.2mほどの伸長式の丸いダイニングテーブルが置かれています。
大きなテーブルには友人を招いて夕食を。丸いテーブルでは、家族でゆっくりと朝食を。この家で暮らし始めてから、「ゆとりを感じられるようになった」と話す安井さん。
自らの友人はもちろん、子どもたちも友だちを家に招くようになり、一緒に食事をしたり、夜遅くまで語り合ったり。空間を壁や仕切りで区切るのではなく、家具や過ごし方によって緩やかに場を分ける。そんな設えが、人が自然と集まり、それぞれが心地よく過ごせる居場所を生み出しているようでした。
光と影
余白のある家
これまでにもリノベーションを経験してきた安井さん。「生涯の家」を建てるにあたり、大切にしたのは、「余白があること」でした。余白とは、見た目のゆとりだけではなく、心や暮らしにも余裕を持てること。
安井さんの住まいを見渡すと、真っ白な壁に高い天井、木枠の美しい窓、形成された光と影。どこか海外の田舎町に佇む小さな教会のような、新しいのに懐かしさを感じる空間。時間とともに移ろう光と影が、その静かな空気をより豊かなものにしていました。
北欧家具とトライバルラグ
年を重ねて感じる、一点ものの価値
自ら北欧の国々で買い付けをする安井さんにとって、ヴィンテージのトライバルラグはとても馴染みが深いものだったそう。「北欧では多くの家でトライバルラグが使われていて。だから、いつか自分の家にも取り入れるものだと思っていました」
北欧では家具を代々受け継ぐことが多いが、実は、ラグも受け継がれるもの。安井さんが初めて購入したトライバルラグは、デンマークで出会ったヴィンテージでした。
当時、ラグの知識が少なかった安井さんにとって、そのラグは手織りか機械織りかも判断がつかなかったそう。とにかく格好良く、北欧の家でもよく使われている一枚を選んだ。
購入後しばらくは、別のラグを使うなど、トライバルラグの存在を忘れていたという安井さん。ところが、数年前からトライバルラグをデイベッドに合わせるようになった。「年を重ねてきたからですかね、一点ものの良さを実感するようになりました」。
この世界にひとつしかないものを暮らしに迎える。その価値を、以前よりも強く感じるようになったといいます。

デンマークで出会ったヴィンテージトライバルラグ。のちに価値ある手織りのラグと知り、よりいっそう愛着が深まった大切な一枚です。
Tribal Rug(トライバルラグ)コレクションを見る憧れから、暮らしの定番へ
フィンランドの建築家・アアルトの自邸で使われていることで知られる、ベニワレンラグ。数年前、Favorでラグイベントを開催した際に迎えた大きなベニワレンは、今では家族の暮らしに欠かせない存在になっているといいます。
「思わず寝転がっちゃうんですよね」
食後のひとときや、雑誌を読む時間。ソファではなく、自然とラグの上に身を委ねてしまうのだそうです。家族が集まり、くつろぎ、それぞれの時間を過ごす場所。ベニワレンは、ただ床に敷かれた一枚のラグではなく、暮らしの景色の一部になっていました。

購入して本当に良かったという、ベニワレン。ふわふわとした質感に思わず寝転んだり、自然と家族が集まるリビングの中心になっています。
Beni Ouarain(ベニワレン)コレクションを見る好きなものに囲まれて、暮らしを育てる
安井さんの自宅には、北欧家具やオブジェ、ラグなど、長い時間をかけて集めてきたものたちが自然に並びます。「仕事と暮らしは、自然とつながっている感覚なんです」
そう話す安井さんにとって、店に並ぶ家具や雑貨は、自分自身も使いたいと思えるものばかり。大きく模様替えをすることはなくても、パーソナルチェアの向きを変えたり、オブジェを入れ替えたり。
そんな小さな変化を重ねながら、自分たちらしい景色を育てているのだそうです。仕事と暮らしを分けるのではなく、好きなものに囲まれながら日々を重ねていく。その自然体な姿勢が、この住まいの心地よさにつながっているように感じました。