Vintage Furniture & Rug
好きなものと暮らす、好きなものに出会う
自分の好きなものに気づくこと、そして好きなものと暮らすこと。そんな簡単なようで難しい、暮らしを愉しむコツ。では暮らしを愉しむプロ、インテリアショップオーナーは、どんなふうに自分の「好き」を見つけて愉しんでいるのでしょうか。
ヴィンテージに魅せられた二人に、話を伺ってみました。名古屋市名東区で北欧ヴィンテージ家具店「Favor」を営む、オーナーの安井さん。そしてG.E.Mのオーナー、伊狩。
Favorさんがセレクトする北欧ヴィンテージ家具と、G.E.Mのヴィンテージラグ。ある人にとっては、価値を感じないもの。でもまたある人にとっては、暮らしを変えてしまうほどの魅力を感じさせてくれるもの。
二人のオーナーに、ヴィンテージに辿り着いたきっかけから、「ヴィンテージとは?」「好きなものと暮らすとは?」について語ってもらいました。
■Favorオーナー/安井 拓
名古屋市名東区で北欧ヴィンテージ家具・オリジナル家具を取り扱うinterior shop
買付け・メンテナンス等も自ら行う
はじまりはアメリカ
意外な共通点
世代も同じ、40代後半のふたり。20代の頃はアメリカヴィンテージが流行っていて、雑貨やオモチャ、古着などが好きだった。
安井さん「元々、古いものが好きで、若い頃はアメリカに憧れて。フィギュアやジーパンを集めたり。映画もよく観ましたね。実際にアメリカにも行きました。」
伊狩「わかります。あの頃はみんな好きでしたよね、憧れて。実は僕も20代の頃、絶対成功する!と意気込んでN.Yへ行ったんです。」
当時の若者世代が憧れた、アメリカンライフを実現すべく、アメリカへ向かったふたり。安井さんはL.A、伊狩はN.Y。西と東、場所は違えど同じアメリカでヴィンテージに出会うことになります。
安井さん「何かお店をオープンしたいと漠然と思っていて。フリーマーケットにも行ったり。初めは家具より雑貨だったんです。ただ、古いもの・ヴィンテージに惹かれるいうのは今と変わらなくて。」
その頃から、新しい物よりも時を重ねたヴィンテージに魅力を感じていたという安井さん。
伊狩「あの頃、アメリカで北欧家具を扱う外国人、いましたよね。僕もいいなーって。ただあの頃は日本ではまだ知られていない便利グッズとか雑貨を、誰よりも先に日本に紹介したい!っていう気持ちが強くて。それに奮闘してましたね。」
ヴィンテージとの出会い
ここから始まるストーリー
当時アメリカ(特に西の地域)では、北欧家具が流行っていたとか。デンマーク人が自国から仕入れてアメリカで売る、といった構図ができていたそう。
安井さん「それを見て、すごくいい!って。家具が格好良かったんですよね。それで、イームズの家具をたくさん買ってネットオークションで販売することを始めたんです。」
始まりはアメリカの有名デザイナー・イームズの家具だった。
一方、伊狩はN.YでABCカーペット&ホームという老舗高級家具店に出会う。
※写真左上:圧倒的な品揃えのABCカーペット&ホーム(N.Y)
伊狩「店内に入って、もうびっくりして。ラグ=アートだ!って。これを自分で仕入れて日本の人たちに見てもらいたい!と一気に気持ちが決まりました。」
ABCカーペットでは世界中のラグを展示していたが、なかでもイランの手織りラグに衝撃を受けたという伊狩。数あるラグのなかでも、時を経たヴィンテージのイラン製のラグの美しさは一際だったとか。
安井さん「僕もその頃、ヴィンテージ家具に行き着いて。今度はアメリカではなく、デンマークだと。初めてデンマークに行ったのも20年ほど前ですかね。」
伊狩「20代後半から何かを始めたくなりますよね。僕も同じです。イランに初めて行ったのもその頃。絶対に自分の目で見て仕入れるんだ!って。」
人生の“これから“を考え始める20代後半。紆余曲折ありながらも、ふたりがたどり着いたのは「ヴィンテージ」でした。
※写真右上:デンマークのヴィンテージ家具たち
現地で買い付ける
これが好きだという自信
安井さん「デンマークでトラックを借りてたくさん周るんです。もちろん自分で運転して。そうすることで、自分がいいなと思うものを知ることができるんですよ。思わぬものに出会えるというのもありますけど。」
現地では自ら運転し、コンテナに積み込みができる状態までを一人でこなすとか。
安井さん「ボロボロのトラックだったり、パンクしたり。いろいろありますよ。でもやっぱり、自分で好きなものを見つけるというのはやめられない。」
伊狩「それがすべてですね。自分がこれ!と思ったものは、たとえ受け入れられなくてもいい。自分にはこれを良いと思える能力があるんだって。それだけでここまで来ました。」
現地での買付けは、トラブルが付き物。それでも、この世に一つしかない家具やラグに出会う喜びはその辛さを忘れさせてくれる。
※写真左上:イランでは毎日数百枚のラグを見て回る
※写真右上:コンテナいっぱいに積み込まれたヴィンテージ家具
なぜヴィンテージなのか
北欧家具やイランの手織りラグは新品もたくさんあるはず。そのなかでなぜ、ヴィンテージなのか。
安井さん「材木の経年変化が圧倒的に美しくて。時を重ねて、様々な環境で過ごしてきた、たった一つの家具。特に北欧家具はシンプルで使い勝手も良く、その魅力は何年経っても色褪せない。そこがヴィンテージの格好良さだと思っています。」
伊狩「この時代にしか表現できなかったデザイン。経年変化で深みを増した色合い。元々、一点物のラグが、本当の意味で唯一無二になる。ひと癖もふた癖もある風合いがたまらなく格好良いんです。」
ヴィンテージとは、時を経て美しさ・格好良さを幾重にも纏ったもの。それに気づき、好きになることがヴィンテージ品をよりランクアップさせてくれる。自分が好きだと思えばそれでいいのだと、ふたりは言います。
これからヴィンテージにしていく楽しさ
使い続けることが、格好良い
そして、これからヴィンテージにしていくという楽しみも。
伊狩「たとえば新品のトライバルラグ。これは使うほどに貫禄が増し、美しい艶を纏うようになる。陽の光や足で踏まれることで色合いも変わってくる。そうやってヴィンテージに仕上げていくんです。大事に育むことで、自分でヴィンテージにしていく。それがまた、楽しい。」
安井さん「北欧家具もそうです。いつも手に触れるところの色が変わってきたり、置き場所によっては日焼けしたり。そういった日常がヴィンテージに仕立ててくれるんです。」
使い続けることで格好良くなるもの。時を経てなお、美しいもの。最初にきちんと物選びをしておけば、“いらなくなる“なんてことは起こらない。むしろ、愛着が増してどんどん好きになり、それを選んだ自分が好きだし、それがある暮らしを好きになる。なにより、それに気づいて好きになることが、楽しい。
ヴィンテージとの出会い、長く一緒に暮らせるものとの出会い。Favorさんでは北欧ヴィンテージ家具、G.E.Mではヴィンテージラグを。誰かの「好きなものとの出会いのきっかけ」になれたら...